性病とは
性行為によって、粘膜や皮膚の接触によって感染する疾患の総称です。オーラルセックスでもアナルセックスでも、性病に感染するリスクはあります。同じ感染症を発症したとしても、現れる症状は性別によって異なることもあります。
ご自身の感染が分かった際は、パートナーに症状が見られなくても、検査を受けるようにしましょう。他人にうつしやすい性病の中には、自覚症状に乏しいものも少なくありません。無症状のまま重篤化し、男性不妊や女性不妊を引き起こす可能性もありますし、最悪の場合、生まれてくる胎児に感染することもあります。
性病は特定の方に発症する疾患ではなく、誰がかかってもおかしくない疾患です。
「コンドームを欠かさず装着する」など、日ごろから感染を予防することも大切ですし、「発症した時は他人にうつさない」と心がけることも重要です。心当たりのある方は速やかに受診し、きちんと適切な治療を受けましょう。
性病の症状は主に、泌尿器に出現します。そのため女性は婦人科へ、男性の場合は泌尿器科へ受診する必要があります。
こんな症状に心当たりはありませんか?
性病によく見られる症状についてまとめていきます。下記のような症状がありましたら、男女問わず、性病が疑われます。
また、性病ではない場合でも、泌尿器疾患である可能性も捨てきれないので、速やかに受診しましょう。
- 外陰部の痛みやできもの、かゆみ、しこり、水ぶくれ
- 排尿した時の違和感、かゆみ、膿が出る
感染リスクについて
「不特定多数との性行為」や「コンドームを着けない性行為」は、性病のリスクを高める行為です。最近感染が流行っている性病も存在していますし、その中には無症状でいる方も多いため、誰が感染しているか特定するのは難しいものです。
また、疲れや睡眠不足で免疫力が低下していたり、慢性疾患(糖尿病など)を持っていたりすると、感染のリスクが高くなります。
性病は大事なパートナーに感染を拡げてしまうリスクのある疾患です。リスクの高い性行為をしてきた方は、早めに受診して感染しているかどうかを確かめましょう。
主な性病について
急性尿道炎
クラミジアや淋菌などの細菌によって、尿道に炎症が起こってしまう状態です。どちらも性行為を介して感染します。オーラルセックスでも感染するため、風俗の利用を通して感染するケースが増えています。口や手を使うサービスでも、コンドームを装着して予防する必要があります。パートナーにクラミジアや淋菌をうつしてしまうと、自覚症状に乏しいまま進行します。
不妊症や子宮外妊娠、母子感染などのリスクが高くなるので、心配な症状がありましたら、できる限り早めに当院へ相談しましょう。自覚症状に乏しいままでも、パートナーも一緒に受診してください。
またクラミジアや淋菌は、同時感染を起こしているケースがよくあるので、症状がみられた場合は、二つの検査を受けることを強く推奨します。
淋菌性尿道炎
男性が感染した場合、「排尿した時の強い痛み」や「黄色っぽい膿が出る」などの症状が見られます。潜伏期間は、性行為後から2~7日ほどです。放っておくと前立腺にも炎症が及ぶようになるため、尿道狭窄や男性不妊のリスクが上昇します。それゆえに、速やかに受診することが重要です。
検査は問診後に行います。かつては「膿を採る方法」で感染の有無を調べていましたが、当院ではよりスムーズに受けられる尿検査で、感染の有無を確かめていきます。また、同時感染しているか否かを確認するため、クラミジアの検査も一緒に行います。 抗生物質を用いた薬物治療が効果的だとされていますが、近年では薬への耐性を持つ淋菌が多くなっています。そのため当院では、注射剤による治療をメインにしています。
クラミジア尿道炎
潜伏期間は性行為後から1~3週間ほどで、その後に症状が出現します。潜伏期間が長い特徴に加えて、目立った症状が出現しないことから、感染者数が多くなっている性病です。
主な症状としては、軽度の排尿痛、白っぽい分泌液、かゆみなどが挙げられます。症状の重さは、違和感を覚える程度のものから、無症状まで、非常に多岐にわたります。
滅多に起こりませんが、精巣上体の炎症(精巣上体炎)や前立腺の炎症(急性前立腺炎)を併発するケースもありますし、放っておくと最悪の場合、男性不妊に至る可能性もあります。
また、女性が感染した場合でも、無症状で進行する可能性はありますし、不妊症や子宮外妊娠、母子感染のリスクを高める要因にもなります。ピンポン感染(パートナー間で感染症をうつしてしまうこと)の元にもなりますので、二人一緒に治すことが大切です。
まずは問診後に尿検査を受けていただき、クラミジアの有無を確かめていきます。治療は2種類あり、「抗生剤の服用を1週間続ける方法」と「ジスロマックを1回だけ服用する方法」です。
尖圭コンジローマ
性器または肛門の周りに、イボのようなブツブツが生じる疾患です。主な原因は、低リスク型のHPV(ヒトパピローマウイルス)で、潜伏期間は性行為後から1~6ヶ月程度です。子宮頸がんの原因となる高リスク型HPVとは別物ですが、同時感染している可能性も考慮して、どちらの検査も受けることをお勧めします。
イボのサイズや発生箇所、症状などによって治療法は変わりますが、外用薬などを用いた薬物療法を続けても改善できない場合があります。その際には、液体窒素(-190℃)を使って何度も凍らせてイボを除去する凍結療法や、電気メスで焼き切る外科手術(電気焼灼術)、レーザー光線を照射(レーザー蒸散術)、外科的切除などをお勧めしています。
性器クラミジア感染症
「クラミジア・トラコマティス」に感染することで発症する疾患です。性病の中でも現在、一番感染者数が多いと報告されています。若年層の感染者が増加傾向にあり、放っておくと不妊症や母子感染に至る危険性もあります。オーラルセックスを通して喉に感染するケースもあり、その後、喉から性器へ感染するケースもあります。
男性の場合は尿道に感染し、クラミジア性尿道炎を発症します。現在では、尿検査で感染しているか否かを調べられるようになりました。痛みを伴わない検査ですので、安心してお気軽に受診してください。 ただし、女性は尿道ではなく子宮頚管に感染するため、尿検査では分かりません。女性の場合は婦人科にて検査を受けましょう。
梅毒
「梅毒トレポネーマ」に感染することで起こる疾患です。日本での感染はここ数年まで目立っていませんでしたが、現在では全国的に感染が拡がっています。
梅毒は進行の度合いによって、特徴的な症状を起こします。ただし、症状が全く現れない期間もありますので、「症状がなくなったから治ったんだ」と勘違いして進行させてしまう患者様もいらっしゃいます。
梅毒のステージは第1、2、3、4期に分かれています。第1期には、感染した部位に小さくて硬いしこり(痛みは伴いません)が発生し、次にリンパ節が腫れていきます。これらの症状は2~3週間経つと消失します。しこりは陰部に発生しやすい傾向があります。
そこから3ヵ月ほど経つと第2期へ移行します。第2期では、発疹や脱毛、ピンク・赤色の斑点、膿といった症状が出現します。これらの症状は、約数年後に消失していきます。
多くの方は第2期までに治療を受けられるので、第3期以降の症状が見られることは滅多にありません。第3・4期に移行すると、「ゴム腫」と呼ばれる梅毒特有の腫れものが身体の皮膚や肝臓、睾丸、大動脈などに生じます。最悪の場合、脳や神経などの障害を起こし、命を落としてしまいます。
梅毒は昔と違って、ペニシリン系の抗生物質で完治できる疾患です。抗生物質は4週間ほど服用し続ける必要があります。
淋病
淋菌に感染することで発症する疾患です。抗生物質への薬剤耐性を持った菌が多くなっているため、医師が「完治した」と判断するまで、治療を継続していく必要があります。喉に感染することもあるため、オーラルセックスを通じて感染するケースも少なくありません。たった一度の性行為でも、淋菌に感染する確率は20~50%もあると言われています。
また、クラミジアと同時感染している症例も増加しているので、淋病にかかった方はクラミジアの検査も一緒に受けるようにしましょう。 男性は尿道に感染し、淋菌性尿道炎になります。発症すると膿っぽい分泌物が出たり、ひどい排尿痛が現れたりします。女性は子宮頚管炎になるケースが多いのですが、この疾患は自覚症状に乏しく、無症状のままでいる方も少なくありません。
近年では、男性でも自覚症状に乏しい傾向が強くなっているので、要注意です。 男性は尿検査で調べられますが、女性の場合は、子宮頚管内の分泌物を採らないと感染の有無が分かりませんので、まずは婦人科へご相談ください。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスに感染することで発症する疾患です。主な症状としては、水疱や潰瘍が挙げられます。これらの症状が治った後でも神経節へウイルスが潜伏してしまうため、完治することは不可能とされています。再発を繰り返しやすく、症状がある時は他者へ感染させやすくなります。また、無症状でもウイルスは排出されているため、知らず知らずのうちにパートナーへ感染させてしまうケースもあります。
初感染時の症状は特に多く、発熱やリンパ節の腫れなどが発生します。激痛を起こすこともあります。再感染した際は、初感染時より軽い症状が現れます。迅速診断キットを使ってすぐに感染の有無を調べることが可能です。 症状がひどい時は抗ウイルス薬の内服で、症状が軽い時は塗り薬で治します。
パートナーの治療や予防も不可欠です
性病の治療・予防は、ご自身とパートナーの将来を守る上で大事な行為です。性行為の始めから終わりまで、コンドームを正しく装着することで、多くの性病は予防できます。オーラルセックスでもアナルセックスでも感染リスクはありますので、性行為する際はいつでも、どのような時でもコンドームを装着しましょう。
先述したように、性病は特定の方に現れる疾患ではありません。誰でもかかり得る疾患です。少しでも疑わしい症状が現れた時や、感染リスクの高い性行為をした場合は、速やかに当院を受診しましょう。
また、性病を発症したと分かった時は、医師が「治療を続けなくてもいい」と判断するまで、きちんと治療を続けましょう。そして必ず、パートナーの方も一緒に受診してください。ご自身だけ治ったとしても、パートナーが無症状のまま感染している可能性もあります。そうなると、再感染を繰り返しやすくなります。
また、無症状で済んでいる場合でも、不妊症や子宮外妊娠、母子感染などのリスクが高くなるので、パートナーには必ず検査を受けるよう伝えましょう。
性病の中には梅毒のように、脳へ大きな悪影響を及ぼすものもありますし、がんの発症リスクを高めるものもあります。さらに、性病を放置し続けると、HIVの感染リスクも高くなると言われています。
心当たりのある方は早めに当院へ受診し、ご自分とパートナーの将来を守っていきましょう。
ブライダルチェック
「ブライダルチェック=結婚前の女性が受ける検査」と思う方もいるかもしれません。しかし近年では、メディアを通して男性不妊が知られるようになったことから、「ブライダルチェックを受けたい」と申し出る男性も多くなっています。
当院では、前立腺の疾患や性病などのリスクが高い疾患がないか、泌尿器に関するトラブルがないかを調べる、男性のブライダルチェックに対応しています。
性病は男性不妊を引き起こす要因にもなります。しかし、検査を通して早期発見・治療を行えば、早めに治すこともできます。 「将来を共にするパートナーができた時」「大事な方にプロポーズする前」に受けることをお勧めします。