夜尿症・おねしょ

大人のおねしょ(夜尿症)とは?

夜尿症は、睡眠中に起こる尿漏れという症状で、よく「おねしょ」と呼ばれているものです。夜尿症は子どもに多いイメージがありますが、大人でも起こり得るものです。子どもの夜尿症は、排尿に関わる機能がまだ発達しきれていないことで発症しているケースが多いので、成長に伴って自然と改善していく傾向があります。
一方、大人の夜尿症の場合は、重篤な疾患が隠れている可能性があるため、心当たりのある方は当院を受診し、原因を特定して治療を受けるようにしましょう。
子どもは成長するにつれて日中の排尿習慣が身に付くので、夜間も徐々にコントロールできるよう発達します。オムツを卒業することが多いのは、2~3歳頃だと言われています。また、水分の過剰摂取や排尿機能の発達の遅れなどによって、5歳くらいまでおねしょをする子もたくさんいます。ただし、6歳以上になっても週に1回以上おねしょをする場合は、夜尿症が疑われます。
大人の夜尿症は大きく分けると2種類あり、小さい頃からの続いている「一次性夜尿症」と、成人になってから発症する「二次性夜尿症」に分類できます。
成人の夜尿症は、誰がかかってもおかしくない疾患です。一人で抱えこまずに当院を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

大人のおねしょ(夜尿症)の原因

主な原因としては、「加齢」「自律神経の乱れ」「睡眠障害」「他の疾患」が挙げられます。

加齢

直腸や膀胱などを支えている「骨盤底筋」は加齢に伴って緩みます。その緩みが起こると、尿漏れも起こりやすくなります。特に、女性は妊娠や出産によって骨盤底筋に負担がかかりやすく、尿道も短いため、尿漏れしやすい傾向にあります。
また、睡眠中に尿意を感じても、加齢で素早く身体が動かなくなることで、トイレまで間に合わずに漏らしてしまう方もいます。

自律神経の乱れ

自律神経とは、呼吸など自分の意思とは関係なく働く機能をコントロールしている神経です。膀胱や尿道も、自律神経が自動的にコントロールしています。睡眠中は自律神経が膀胱の緊張を緩ませることで、普段より約1.5倍の尿を貯留できるようにしていると言われています。しかし自律神経の不調が続くと、こういったコントロールが難しくなり、尿を少ししか貯留できなくなります。
その結果、尿漏れが起こるのです。また自律神経は、心配や不安などのストレスや生活習慣の乱れによって、崩れることもあります。自律神経のバランスが崩れると様々な不調が起こります。尿漏れや夜尿症もその症状の一つです。

睡眠障害

睡眠の質が良いと、抗利尿ホルモンが分泌されるので尿量が抑えられます。その結果、ずっと熟睡したまま眠れます。しかし「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」「眠りが浅い」といった睡眠障害を抱えていると、抗利尿ホルモンがうまく分泌できなくなるため、健康な方と比べて、睡眠中に膀胱内へ貯留される尿量が多くなります。その結果、尿漏れを起こしてしまうのです。

生活習慣など

日ごろの習慣や生活環境も、大きく関係しています。 具体的に言いますと、「就寝時間を決めていないので質の高い睡眠がとれない」「寝酒が癖になっている」「睡眠中、寝具を蹴飛ばすので冷えてしまう」などの習慣があると、尿漏れ・おねしょをしやすくなります。 特に、「尿意で夜、目を覚ます回数が多くなった」「トイレに関する夢をよく見る」と言う方は、尿漏れやおねしょのリスクが高いので要注意です。

大人のおねしょ(夜尿症)を引き起こす病気

排尿機能に関わる神経や、尿路(膀胱など)に関する疾患などによって引き起こされている可能性が高いです。 排尿機能に関わるものでは特に、脊髄に損傷を与える疾患が、夜尿症の発症と密接に関わっていることが多い傾向にあります。
代表的な疾患としては、「腰椎脊柱管狭窄症」と糖尿病の三大合併症である「末梢神経障害」などが挙げられます。これらの疾患を発症すると、尿意を感じにくくなるので、日中でも尿漏れしやすくなります。
尿路に関する疾患としては、便秘や前立腺肥大症、子宮脱などが挙げられます。これらの疾患にかかると膀胱や尿管が圧迫されるため、夜間でも日中でも尿漏れしやすくなります。 他にも、睡眠の質を下げる「睡眠時無呼吸症候群」や「気分障害(うつ病など)」なども、夜尿症のリスクを高めてしまいます。 原因に合った治療を受ければきちんと改善できますので、「もしかしたら」と思った方は、放置せずに当院へご相談ください。

過活動膀胱

過活動膀胱

名前の通り、膀胱が過剰に活動することで起こる疾患です。頻尿や強い尿意を催すことでトイレへ間に合わなくなり、切迫性尿失禁などを起こしてしまいます。睡眠中でも、尿漏れやおねしょが出てしまいます。トイレに対する不安によって外出や交流が苦手になるなど、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を大幅に下げる恐れもあるため、お悩みの方は早めに治療を受けましょう。
また、当院では、薬物療法では改善できない過活動膀胱の患者様、薬の副作用が強く現れてしまった患者様に向けた、「ボトックス膀胱壁内注入治療」を行っています。
これは、筋肉を緩める作用を持つボトックスを、膀胱壁に直接注射(20~30か所)していく方法です。注射といっても、施術前には局所麻酔を行いますので、痛みはほとんど伴いません。
保険適用の範囲内かつ日帰りで受けられるので、すぐに日常生活へ戻ることも可能です。

前立腺肥大症

前立腺肥大前立腺とは、精液の一部を分泌する臓器で、男性しか持っていません。加齢に伴って大きくなりやすい傾向があります。尿道をとり囲むように位置しているため、大きくなると尿道を圧迫してしまいます。その結果、適切な排尿が難しくなります。
頻尿や溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん:膀胱に溜まった尿が漏れ出てしまう状態)などの症状を引き起こし、おねしょを起こす場合があります。

神経因性膀胱

トイレに関する指令は、脳から命令されて膀胱へ届きます。この働きが上手くコントロールできなくなる状態を、「神経因性膀胱」と呼びます。発症すると、排尿や尿を溜める機能に障害が起こります。原因となる疾患としては、脳梗塞や脳出血などの脳障害、糖尿病などが挙げられますので、放置は禁物です。

便秘

排出されない便によって膀胱が押さえつけられると、貯留できる尿量が減り、尿漏れが起こりやすくなります。便秘に悩む方は多くいますが、長引かせたままでいると夜尿症だけでなく、様々な疾患を引き起こす要因にもなります。
便秘は繰り返しやすいので、お悩みの方は当院を受診し、しっかり治療を続けて根治させましょう。

糖尿病

血糖値が高い状態でいると、血糖を体外から出すために、多くの水分を摂る必要があります。それによって多尿になり、おねしょになるケースがあります。 また、糖尿病の三大合併症である神経障害を発症すると、神経因性膀胱が起こりやすくなります。これによって、さらに夜尿症のリスクも高くなってしまいます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、睡眠の質が大幅に下がってしまう疾患です。「睡眠時間をきちんと確保しても熟睡できない」「何度も目が覚めるので睡眠不足になり、集中力が下がってしまう」「日中に我慢できないほどの眠気に襲われる」といった悩みが現れます。
近年ではメディアを通して、睡眠時無呼吸症候群による大きな事故が報道されています。睡眠の質が下がるので、夜間の尿漏れやおねしょに悩まされやすくなるため、お早めにご相談ください。

大人のおねしょ(夜尿症)の対策・治療

加齢

「もう年だから」と考えてしまうと、外出や人との交流が億劫になり、精神的にも肉体的にも老け込んでしまいます。活発に行動すると体力・筋力が維持され、治療を受ければきちんと改善できますので、ご安心ください。また、ケア用品をうまく活用することも、有効とされています。

ストレス

ストレスとなる要因を取り除くことが一番効果的ですが、「そう簡単にできない」と悩み、ますますストレスを抱えてしまう方も多いかと思われます。「趣味や楽しいことに打ち込む」「お風呂や布団周りなどをさらにリラックスできるよう整える」などの対処法でも構いませんので、気分転換できる行動を行ってみましょう。

生活習慣

十分な睡眠は、治療においてかなり大切なことです。寝る前の水分摂取は控えめにして、必ず用を足してから床につくようにしましょう。また、アルコールには利尿作用がありますので、寝酒は避けてください。早寝早起きを習慣化するのも有効です。
朝日を浴びると体内時計がリセットされるので、体調が安定しやすくなります。「適度な運動」「栄養バランスの整った食事」「規則正しい生活」を心がけることは、尿失禁だけでなく、全身の健康を守る上でも重要です。

疾患

夜尿症などでお悩みの方は、まずは泌尿器科を受診して疾患が隠れていないかを確認しましょう。原因疾患によっては、泌尿器科以外の診療科にて、専門的な治療を受けた方がいい場合もあります。便秘の場合は消化器内科へ、糖尿病でしたら内科へ、睡眠時無呼吸症候群でしたら睡眠外来へ相談すると良いでしょう。
当院では、泌尿器以外の原因疾患によって夜尿症を起こしている可能性が高い患者様には、連携先の医療機関へご紹介しています。心当たりのある方は、お気軽にご相談ください。

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