尿の濁り
「透明で黄色っぽい尿」でしたら、特に問題ありません。尿が白濁している場合は、尿中に含まれているリン酸やシュウ酸などの塩類の結晶化、尿路感染、血尿で起こっている可能性があります。また、女性の場合は、おりものによって白く濁っているケースも考えられます。
尿が濁る原因
食生活による尿の濁り
特定の食品をたくさん食べたり飲んだりすると、余分なリン酸やシュウ酸などの塩類が結晶化し、尿が濁りやすくなります。ホウレンソウやバナナ、ゴボウ、ココア、動物性脂肪が多く含まれている肉などのタンパク質をたくさん摂りすぎると、尿中のシュウ酸カルシウムの結晶が多くなり、尿の白濁を起こします。
「濁りがある=重篤な疾患にかかる」というわけではありませんが、結石のリスクが高い状態にはなります。結石のリスクを下げるにはまず、食生活の見直しが大切です。まずは当院にて尿検査を受け、濁りの原因を調べて改善のための指導を受けておくと良いでしょう。
女性に起こる尿の濁り
特に女性は、おりものや経血が混じることで、尿が濁って見えるケースが多々あります。陰部のかゆみや不快感、排尿時の痛み、頻尿などの症状を伴っていない場合や、一時的に濁っている場合でしたら、そこまで心配しなくても問題ありません。
ただし長期間濁り続けている場合は、無症状でも、慢性膀胱炎などを発症している恐れがあります。心当たりのある方は当院へご相談ください。
性病による尿の濁り
性病(性感染症)が原因で、尿が濁っている可能性も考えられます。特に最近では、20代の淋菌・クラミジアが長期間続いている傾向が強く、10代の患者数も増加傾向にあります。他の症状を伴わない患者様も少なくないので、知らず知らずのうちに感染を拡げているケースも多くあります。
性感染症は、女性の不妊症だけでなく、男性不妊症を引き起こすことも少なくありません。放っておくと母子感染を引き起こすこともありますし、性別によって症状の強さや内容が異なる場合もあります。ご自身だけでなく、パートナーの治療も一緒に行っていきましょう。
血尿による尿の濁り
感染や結石(膀胱炎や尿路結石など)によって尿路の粘膜がダメージを受けて出血してしまった結果、血尿となって尿が濁って見えることもあります。
目視では確認できない程の血尿でも、濁った尿として排出されることがあります。
尿の濁りを起こす主な疾患
腎臓や膀胱、尿管、尿道といった尿路、前立腺(男性のみ)に起こる疾患なども、尿の濁りの原因になります。炎症や結石、感染症、がん疾患などによって起こるケースもあります。特に感染症が悪化した場合は、膿が尿の中へ混入されるため、濁りがひどくなります。
腎結石・尿管結石
腎臓内でシュウ酸や尿酸などが結晶化し、それが腎臓内や尿管を通る時に粘膜がこすれて出血することで、尿の濁りや血尿が起こる可能性もあります。頻尿や残尿感、尿の出が悪い、排尿困難等の症状が現れることもあります。尿管内のくびれて細くなっている箇所に結石が詰まると、腰や脇腹、背中に突然激痛が走るようになります。激痛だけでなく、吐き気や嘔吐、冷や汗などが現れることもあります。
腎盂腎炎
腎臓に細菌が侵入することで発症する炎症です。尿の中の白血球数が多くなることで、白く濁ります。吐き気や嘔吐、排尿時の痛み、高熱、血尿、背部痛、腰痛などを伴うこともあります。膀胱炎を何度も再発させたり、冷えや過労などで免疫力が低下したりした時に、感染が拡がりやすい傾向があります。
膀胱炎を発症しやすい女性に多くみられます。
急性膀胱炎
尿の白濁に加えて、頻尿や排尿痛(排尿した後に起こる)、血尿といった症状も起こります。尿道口から侵入した細菌が膀胱粘膜へ感染することで起こるため、尿道が男性よりも短い女性に多くみられます。再発リスクが高いので、きちんと根治させることが大切です。そして「尿意を無理に我慢しない」「デリケートゾーンを不潔にしない」などの予防も必須です。慢性膀胱炎は自覚症状が目立たないので、要注意です。また「尿が貯留した時に痛みを感じるが、尿を出すと痛みがなくなる」という場合は、間質性膀胱炎である可能性が考えられます。
尿道炎
淋菌やクラミジアに感染した結果、急性の炎症が起こるというケースがほとんどです。放っておくと尿道が狭くなり、尿が出なくなる危険な状態に陥ることもあります。男性に多くみられる炎症ですが、自覚症状に乏しくて、パートナーの女性にうつしている可能性があります。心当たりのある方はぜひ、パートナーにも検査・治療を受けるよう伝えましょう。
淋菌感染症
淋菌によって発症する疾患です。男性がかかると尿が出始めた時に、強い痛みが起こるようになります。また、尿に黄色っぽい膿が混入することで、尿が白濁するケースも多々あります。
女性は感染しても無症状でいる傾向が強く、軽度のかゆみやおりもの程度で済むことが多いです。しかし放置すると母子感染によって、胎児が失明するリスクもあります。発症した方は必ず、パートナーと一緒に検査・治療を受けましょう。
性器クラミジア感染症
クラミジアによって発症する疾患です。女性の性感染症の中でも、一番患者数が多い疾患と言われています。男性がかかると、尿が出始めた時に軽い痛みが走るようになります。
化膿している場合は、薄く濁った尿が少し出てきます。女性は発症しても自覚症状に乏しいです。しかし不妊や母子感染の原因にもなりますので、少しでも疑いのある場合は、きちんと当院で検査を受けましょう。
前立腺炎
前立腺は男性しか持っていない臓器です。膀胱の下に位置していて、尿道を取り囲むように存在しています。精液の一部となる分泌物を生成する役割を担っています。前立腺炎は、若年層の患者数が多い疾患です。
主な症状としては、尿が出始めた時の強い痛み、頻尿、残尿感などが挙げられます。炎症がひどくなると排尿痛も重くなり、下腹部全体が痛むようになります。他にも高熱や寒気、膿による尿の白濁も現れます。前立腺肥大症へ移行する可能性もありますので、早めに受診してきちんと治療を受けましょう。
腎結核
結核菌が血液の中に入り込み、腎臓へ移ることで発症する疾患です。初期症状として、尿の濁りが現れます。他の症状を伴わないまま進行し、腎臓内に膿が溜まるようになると、尿の濁りもひどくなります。
さらに悪化すると高熱(40℃以上)や下腹部痛を引き起こし、最悪の場合、腎不全に至る恐れもあります。初めは片方の腎臓に起こりますが、もう片方の腎臓や尿路にも感染が拡大されることもあるので、早期発見が大切です。
前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん
泌尿器がんは早期の場合、自覚症状に乏しい傾向があります。極僅かな血液が尿に混入し、尿が濁ることで見つかるケースが多々あります。早期発見のためにも、白濁した尿が出てきた方は、早めに当院へ受診しましょう。進行するにつれて排尿にも問題が生じ、目視で分かる程の血尿や、強い尿の濁りを起こすようになります。また尿閉(にょうへい:尿意を感じるのに尿が出ない状態)や、勃起不全(男性の場合)になるケースもあります。
前立腺がんの腫瘍マーカーとして活用されている「前立腺特異抗原(PSA)検査」は、かなり精度の高いスクリーニング検査で、前立腺がんの早期発見に極めて有効とされています。血液を採るだけで行える検査ですので、近年では人間ドックなどのオプション検査として追加できるようになっています。
尿の濁りは身体からの重要なサイン
尿の濁りは、重篤な疾患の早期発見にも繋がる、身体からの大切な危険信号です。もちろん、特に大きな問題のない濁りもありますが、その場合でも、尿路結石のリスクは高くなります。食習慣を少し変えるだけで発症リスクは抑えられますので、お悩みの方は当院を受診し、適切な治療や指導を受けましょう。 また、尿が濁っていて、かつ性感染症の可能性がある女性は、婦人科にて相談しましょう。泌尿器科疾患の有無を調べた後に、連携先の婦人科へご紹介することも可能ですので、お悩みの方はお気軽にお申し出ください。
食生活の注意
食べ物・飲み物が原因で尿が濁ることもあります。食べ物・飲み物による尿の濁りでしたら、特に治療を行う必要はありません。しかし、結石リスクが高い状態であることには変わりないので、食生活に気を付ける必要はあります。
シュウ酸カルシウムによる結石が生じている場合は、ホウレンソウやタケノコ、ゴボウ、バナナ、ココアや動物性タンパク質の摂取量を控えめにしましょう。また、シュウ酸やカルシウムの濃度を下げるには、クエン酸やマグネシウムが豊富に含まれている柑橘類、緑黄色野菜をこまめに摂ることが有効です。 尿酸カルシウムによって尿が濁っている場合は、プリン体が豊富に含まれている内臓類(レバーやあん肝など)、魚卵(ウニ・イクラなど)、お酒を控えましょう。
性交渉時にはコンドームを正しく装着しましょう
避妊を必要としない場合でも、性行為を行う際は、初めから最後までコンドームを正しく着けてください。コンドームは、性感染症の予防に極めて有効です。しかしコンドームを正しい方法で装着していた場合でも、感染するリスクはゼロだと言えません。「装着に失敗したかも……」と思いましたら、早めに当院へご相談ください。